zinma Ⅲ
シギはルシールの言葉を遮り、真剣な顔でルシールを見つめる。
それにルシールが顔を歪め泣きそうな顔になるが、気にせずシギは言う。
「ルシール、聞いて。
僕は今回は旅をすることを選んだけど、だからってこの村で平和に暮らすっていうのを諦めたわけじゃないんだ。
必ず、それも叶えてみせる。
旅を終えたら、必ずここに帰ってくる。」
ルシールがぽろぽろと涙を流しながら、顔をそむける。
「そんなのわからないわよ。
シギさんの旅は始まったばっかりでしょ?
これからもっとたくさんの素敵な街に行くんだもの。
住みたくなるような街が他に見つかるかもしれないわ。
そのときは、その街に住んだほうがシギさんのためにも……」
しかしそれをまた遮ってシギは言う。
「ルシール。僕の顔を見て。」
それにルシールは少しためらうが、ゆっくりシギの顔を見る。
シギはルシールの目をまっすぐに見て、言う。
「ルシール。
他にどんな美しい街を見ても、僕は必ず帰ってくる自信がある。
ここじゃないとだめなんだよ。
だって……
だってルシールはここにしかいないだろ。」
それにルシールの瞳が揺らぐ。
「君が僕の世界を変えたって言っただろ?
あのときルシールは師匠と同じで、僕はルシールに自分の天命を感じたんだ。
ルシールに会って、自分の人生が変わるっていうのがまるで決まった道だったみたいに、しっくりきた。」
そこまで言ってシギは一度息をつく。
そしてルシールの腕をつかみ、自分のほうへ引き寄せ、抱きしめる。
ルシールはぴったりとシギの中におさまる。
「ルシール。
まだ17になる前の子供な僕がこんなことを言うのはおかしいと思うし、ルシールと3日前に出会ったばかりなのもわかってるけど…
でも……」
「僕は君を、愛してる。」