zinma Ⅲ
『師匠。』
『レイか。なんだ?』
『師匠たちは王都へ行ったことはあるんですか?』
『………ああ。』
『どんなところなんです?』
『……そうだな。とても広くて、美しい…と思う。』
『思う?』
『…ああ。あまり、はっきり覚えていないんだ。』
『そんなに昔なんですか?』
『昔……だな。とても、昔だ。』
『そうですか…。』
『………………レイ。』
『はい?』
『……何を見ても、たとえそれがどれだけ酷く惨いものであっても、まずは目をつぶれ。』
『………』
『目を閉じて、世界の広さを思い浮かべるんだ。』
『世界……。』
『そう。そうすれば、目の前のものがなんであれ、小さく見える。』
『……はい。』
『それだけは、覚えておけ。』
『はい。』
「……カリア。」
「え?」
思わずつぶやいた言葉にシギが聞き返してくる。
しかしそれには答えず、ただその亡き師匠に瓜二つな顔を見て微笑む。
「やっとあのとき…あなたが思い出していた景色を…美しく惨い世界を見られます。」
それにシギは今度こそ首を傾げるが、それには答えずただただ微笑んだ。