赤い糸―運命のヒト―




「空ちゃんの家族って…?」



店主は躊躇いながら聞いてきた。



この人には話してもいいと思った。



いや、話すべきだ。



俺の話で心配させてしまったはずだから。



「空の本当の両親は、空が幼い頃に亡くなっています。」



「本当の…?」



「はい。今は親戚の家の養女として暮らしてたんですが、空の義母と義父は空を邪険にして…それどころか空をストレス発散の道具に…」



「…っ!!」



俺の言葉の意味を理解したらしい店主が小さく息を飲んだのがわかった。



「…そうか。そういえば空ちゃんがバイトを始める時、親のサインが必要だって言ったら躊躇ってたな…そんな事情が…」



店主は悲しそうにそう呟いた。



空、ここにもお前を心配してくれる人がいるよ?



相澤だって、日向だって、それに認めたくないけど落合だってきっと…



お前はもう1人じゃないんだ。



だから俺達から逃げないで…?



1人で抱えこまないで…?



俺達が支えるから…――



俺は「空は絶対俺が連れ戻してきます。」と言って店を出た。






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