一番近くに君が居る
まさかの出来事に騒然とする人々。しかし直哉はそんな事はお構いなしだ。正直、直哉自身も苛立っていた部分があり、いつも通りの直哉という訳にはいかなかったのだ。
「何のつもりかよく知らねぇけどよ、聞きたい事があるなら俺に聞け」
「…分かったな?」と、ジロリと辺りを見回し告げた威圧的な直哉の態度に、動きを止めていた彼らは慌ててうんうん、と頷く。
そして彼らはコソコソと身を潜めるようにしてそそくさとその場から散らばっていった。
その後、見物客により騒ついた雰囲気が作られていたが、その場はまた新たに登校して来た生徒達によっていつも通りの朝の忙しさやら気怠さに包まれ始め、いつの間にか今の出来事など何も無かったかのような、騒動以前の状態に戻っていた。
「あ、ありがとう」
渦中にいた二人の間に何気なしに生まれた無言の時に、終わりを告げたのは美穂の方で。
「いや、別に…困るよな、あんなに詰め寄られても」