一番近くに君が居る


ーーそして朝になり、ココは目を覚ました。
部屋のドアを開くと、階段の方から朝食の良い匂いがしてくる。それに釣られるように下へ降りて行くと、久代がいつも通りの優しい笑顔で「ココちゃんおはよう」とご飯を作る手を休めて声をかけた。
それに「久代さんおはよう!」と答え、ココは思い出す。そうだ、今日の夜はお祭りだ!と。すると昨夜のワクワクした気持ちが蘇り、「ふんふ~ん」とつい鼻歌まで飛び出す始末。


「あらココちゃん。随分楽しそうだけど、今日は何かいい事が有るのかしら?」

「え、すごい!何で分かったの?」

「ふふ、そりゃあこーんなに小さい頃からココちゃんを見てきたもの。すーぐ分かるわよ」


そう言って久代は人差し指と親指でコの字を作って小さい頃のサイズをみせる。「久代さん、流石にそんなに小さくないよ!」とココが大真面目に答えるのがまた久代には可愛らしかった。

朝食をテーブルに並べて二人は席に着く。休みの日は久代とココは二人で朝食を摂る、これもまたずっと小さい頃から変わらない習慣であった。


「いただきまーす!」

「はい、召し上がれ。あぁココちゃん、そこにお醤油あるから気をつけて」


なんて久代はついつい小さな子供のようにココを扱ってしまうが、目の前のココはもう16歳。早いものだわ、と感慨深く思う。
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