一番近くに君が居る
かけられた声にハッと聞こえて来た方へと振り返ると、そこには久々に見た、もう一人の幼馴染の姿。…と、
「おー、久しぶりー牧君」
…後ろの席の、アイツの姿。
「…おう、笑華と…佐久間」
苦い表情で直哉は言った。久しぶりの再会だが、やけに濃いこのメンツ。今この瞬間には正直出会いたくなかったのが本音である。
すると笑華はそんな直哉の様子をチラリと見て、その後ろの方に居るバスケ部部員らの団体の方へと目をやる。
「…あれ、アイツらと来たんじゃないよね?」
冷たい視線を笑華は直哉に送る。それは直哉を非難しているようだった。まるで直哉が今どういう流れでここに居る事になり、どうして一人離れて電話をかけているのか、全てお見通しだと言わんばかりに。
「…違ぇよ。だから何だ?俺は今急いでんだ」
「そうなの?急いで何をするつもりなの?」
そう尋ねてくる笑華は、完全に喧嘩をうる体制に入っている。どうやら俺が気に入らないらしい。
昔からそうだ。笑華は自分の中で筋の通らない事や気に入らないことがあると正面からぶつかってくる。それはどういうこと?と。