一番近くに君が居る

「なんだ?何が気に入らねぇ?今会ったばっかでさっぱり思い当たる節がねぇんだけど」


応戦体制に入った直哉。ピリピリと緊迫した空気が漂い始め、翔は「うわっ、こわっ!」なんて言いながらも興味津々で、目を輝かせて二人の様子を窺っている。

そんな祭には異様な雰囲気を放つ二人を、察知した者がもう一人。


「直哉君?どうしたのっ…え?」


向こう側からは様子は窺えても直哉の後ろ姿しか見えなかったのだろう。思いもしなかったであろうそこに在る笑華と翔の存在に、美穂はこちらまで近づいて来た足をピタリと止めて、その場で固まった。

そんな美穂を一瞥し、笑華は「あぁ、そう。まさかアンタもでてくるとはね、そういうこと」なんて、呆れたように笑いながら呟く。そして、


「まぁアンタが誰と居ようが構わないけどさ、ココちゃん。ずっと奥の階段の方に居たよ」


ジロリと大きな二つの瞳で直哉を睨みつけーー


「…アンタ、いつまでそんな事やってんの?」


ーー凛とした声で告げた言葉は、直哉の心の奥まで響いた。

問いかけるその言葉。直哉は答えを探すまでもなく、見つけた。ずっとしまって置いたものの場所へと、その言葉が導いてくれた、そんな感覚だった。



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