一番近くに君が居る
「ーー似合ってる」
長田の手を取ったココは人の流れの合間をぬってなるべく速く、兎に角前へ前へと進んでいく。何かを考えていた訳ではない。ただ、ここには居たくなかった。早く見え無くなりたかった。早く聞こえ無くなりたかった。何故だろうなんて、そんな事を考える余裕も無い。
だからだろう。自分を呼ぶ声に気づかなかったのは決して人が賑わっているせいだけでは無かったと思う。
「ーーーやさん、」
随分前から呼んでいたのだろうか。どれくらい前からどれだけ呼んでたのかはさっぱり分からない。
「ーーのみやさん、」
ただ、どうせならもっと早く気づいていればなと、思う。
「篠宮さんっ!」
「!」
ようやく声がココの耳に入り我に返った時には、人も疎らなメインからは離れているであろう場所に居て、
「…ここはどこ?」
思わず辺りを見回しココは首を傾げた。