一番近くに君が居る


グググっと眉間に皺を寄せ、ココは言葉で悩みを表現する。ありのまま思ったままを口にするココに、長田はというと、自分の思っていたものと違うココの話に出だしから押され気味で、結局聞いても何の事なのかさっぱり理解出来ずにいた。


「……」


でも、話を聞くと言った以上、責任感の強い長田としては放って置く事は出来ない。


「…逃げたのか?」

「え?」

「あの場から逃げたかったのか?」


じっと目を見つめられて尋ねられたその言葉に、ココは少し驚きながらも「うん」と答える。


「なんでそう思ったんだ?」

「え?」

「まだなんで逃げたくなったのか聞いてないと思うから」

「あ、あぁえっと…なんでって…そう、直哉が美穂ちゃんに一緒に行こうって言われて、でもわたしは部活の事よく知らないから行きたくなくて…」

「うん」

「美穂ちゃんは浴衣だし…でもわたし浴衣じゃないし…直哉浴衣好きだし…」

「ちょ、ちょっと待て。そこだそこ」

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