一番近くに君が居る
長田に止められ、「え?」と口にした後、可笑しな事言った?と顔で尋ねるココ。そんなココを見て可笑しいだろ、絶対可笑しい。と長田は理解出来ないと眉間に皺が寄せられる。
「なんで浴衣がでてくるんだよ、さっきもそういえば言ってたな、浴衣じゃないとかどうとか。知らない奴のとこに行きたくないのは分かる。でもその浴衣は逃げたくなったのとまた違うんじゃないのか?」
「え?…違う?ち、違くないよ!違くない!」
「でも向こう行きたくなくて逃げて来て、急だったから心配させたかなぁって今思ってるんだったら困ったような気持ちでも可笑しくないんじゃないか?」
「ち、違う…よ、違う!わかった、そうじゃない!わたし、違った!」
「え?」と今度は長田が尋ねると、ココはバツが悪そうにしながらもう一度「ち、違った…」と呟いた。
「違う?何が?」
「…理由。違った。きっと知らないとかは理由だけど理由じゃない。きっとわたし、いつもだったら一緒に行ってたと思う」
そうだ、いつものわたしだったら直哉の友達はどんな人達だろうって思ってたと思う…でも、今日は思えなかった、そこにあった。
「でも知らないからって言い訳にしてたんだ、きっと…。言葉にしてわたしが言った事を教えてくれたから、聞いてみて違うなと思った。なんかしっくりこなかったの」
「……」
そして思い浮かんだのは、淡い水色の浴衣と、直哉の前で見せたあの表情の美穂。
「…わたし、美穂ちゃんが可愛かったから逃げて来たんだ…」