一番近くに君が居る


その言葉は、口から出た瞬間ふわりと軽いものになった。

心の中で気持ちは育っていた。しかし、その現実からずっと目を背けているうちに…それは例えば、とても大きく、重く、硬いものに変わってしまったように思う。

どうやって扱えばいいのかも分からず、どうすれば形を変えられるのかも分からず、そのうちどうしても取り除く事が出来なくなってしまったそれ。それが今言葉として外へ出た瞬間、やっと形を変えた。ふわりと柔らかく浮かび上がり、スッと心が軽くなるが分かった。

結局こうするしかなかったのか…と、直哉は理解した。


…しかし。


「…え?あ、うん。わたしも好きだよ」


ココはなんだそんなことかと、安堵の表情を浮かべ、今更どうしたの?といったように訝しげにこちらを見る。

確かに今更だ。今更だけどーーやっとなんだ。


「違うんだ。それとは違う」

「え?」

「ココ、俺はおまえに…恋してる」


「そう言えば伝わるか?」なんて、困ったように笑いながら直哉は言った。

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