一番近くに君が居る


そして文化祭の準備も終わり、下校時間がきた。
直哉は文化祭前日といえど部活があるため、翔に“ココの気持ちが分かるまで距離を置いている”という今の状況を説明した。今日も翔はココと共に下校するからである。


「いいか、余計な事とか吹き込むなよな!ココが何か言ってくるまで知らない振りしとけよ!」


相変わらずの念の入れように翔はやれやれと思いつつ、「はいはい」と教室を出た。教室外に出ると明日が文化祭だからか、辺りの雰囲気がいつもより浮き足立っているような気がする。

そんな楽しいもんかね、と思いながらココの教室の前に到着すると、教室の中に居るココをすぐに見つける事が出来た。何故すぐに見つかったかのかというと…


「…うわ、すっげぇ辛気臭ぇ…」


明らかに、周りと違うココの空気。原因はもちろん分かっているが…さて、どうしたものか。

余計な事言うなっつー命令だしなー。


「ココ、お待たせ」


とりあえず声をかけてみると、いつものようにかえってきた笑顔。


「あ、う、うん!帰ろう!」


…ぎ、ぎこちない…


本人は上手くやれてるつもりであろうそれは、直哉をシカトしていたあの時と全く同じ表情であった。

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