一番近くに君が居る
「気持ちが分からねぇのか?」と、翔が改めて尋ねると、ココはうん、と頷く。
「…分からねぇはずがねぇだろ。自分の気持ちなんだから」
「…うん。でもね、なんか違うの。前に言ったの覚えてる?わたしが直哉の事好きっていうのは恋じゃないと思ってたけど、その、恋がピリピリしてるのじゃなかったって言って…」
「あぁ、“恋は戦”事件な」
言いたい事が分かった翔が一言でまとめると、ココは「事件?」と首を傾げた。そんなココに「分かったっつー事だよ。そんで?」と、翔は次へと促す。
「あ、うん。でね?結局あれから進めて無いんだけど…恋がふわふわした物ならもしかしたらわたしにも!って思ったけど、恋って、ピリピリするもので間違いないみたいなの。警戒したりするんだって。取られたくないって思うんだって。そしたらわたし、そんな風に思ってないって、前にも言ったよね?そう、だからね、だから、恋してないんじゃないかなって。そう思って…」
「でも…」と言いながらも、ココの言葉はそこで途切れてしまう。きっとここの部分でココはグルグル巡っているのだろう。
本当は何も口出ししたくねぇけど…仕方ねぇなぁ…と、翔は溜息をついた。
流石に先に進まな過ぎても直哉に酷だ。そういうことだと、心の中で言い訳をしたりする。