一番近くに君が居る

「…ねぇ、翔君。もし…わたしが直哉の返事に…うんって言ったら、そしたら…どうなるの？」

「どうなるって、付き合うんだろ？」

「じゃあもし嫌になったら？もし直哉がわたしを嫌になって一緒に居られなくなったら？わたしは一人になるの？」


そう言うココの瞳はいつの間にかいつかのごとく、今では無い何かを写しているようだった。まるで遠くのーー過去を、見ているかのようだ。


「の、望み過ぎたらダメなの。終わりが見えるの。一人になりたくないの、もう絶対。直哉が居なくなったらわたし…そんなの、考えられなくて…。だからわたしは、必要以上に望んだらダメで…」

「…おまえは、そのせいできっと、ずっと逃げてきたんだな。自分の想いから」

「…え？」


ハッと我に返ったように、視線を翔に戻すココ。その瞳には翔が映っている。
映る翔は先程までとは違い、その柔らかで穏やかな様子にココは心が落ち着き始める。


「なぁ、ココ。それは牧に言ったか？」

「……ううん」

「じゃあ言ってみろよ、思い切って」


「まっ、まずは自分がどう想ってるのかハッキリさせてからだけどな」なんて言って、翔は優しげに微笑んだ。

そんな翔を見て、何かが解決した、何故かそんな風にココは感じた。