一番近くに君が居る


「…翔君、ありがとう」


先を歩く翔の背中にココは声かけた。しかし小さな声だったからか、翔からは何の反応もない。


「っ翔君!ありがとう!」


悔しくなったココは大きく息を吸い込んで声を吐き出した。すると次に出たのは思ったよりもとても大きな声で。


「き、聞こえてるっつーの!」


なんて慌てて振り返った翔。どうやら最初の一声も聞こえていたらしい。

そんな翔にココがもう一度「ありがとう!」と告げると、翔は照れているのか、それとも不貞腐れているのか、プイッとそっぽを向いてしまった。


「…ん?え?ちょっと翔君?何?どうしたの?」


その翔の顔を覗き込もうとココは必死に移動するが、翔も意地になって顔を逸らす。


「もうっ、何?なんで!…あ、もしかして…怒ってるの?」


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