一番近くに君が居る
「…ん?ココ?」
いつもなら間髪入れない勢いで返って来るココの返事。もちろん“行く!”と返って来るものだとばかり思っていた咲は不思議に思いココの顔を覗いてみると、ココは視線を直哉に合わせたまま難しい顔をしていた。ココらしからぬ表情だ。
「どうしたの?もしやケンカでもした?」
「…いやぁ、そういう訳じゃないんだけど…」
と、何やら口にしずらい様子に咲は察し、もしかして佐久間 翔が何か余計な事をしたとか…!なんて事を思いながら再度視線をココから直哉へと移した。すると、目に入ったのは先程とは違う状況。
すぐに咲はコレか!と、確信した。
「あれ、バスケ部のマネだよね?確か…」
「え?あ、うん。美穂ちゃん」
二人の視線の先には焼きそばを焼く直哉と、そんな直哉に声をかける美穂。
何をどう話しているのかは分からないが、何やら周囲の働きかけがあったようで直哉は隣に居た男子と焼く係を代わった。そしてーー
「…もしや二人、文化祭見て回るつもりかな」
そのまま二人は仲良さげに並んで歩き出した。手を繋いでいる訳では無いにしても…その距離は決して他人の距離では無い。
二人が元々付き合っていたという噂が流れていた頃があるため、咲もその事実はココに確認して知っていた。だからそう見えたのであろうか。いや、見えたというか、二人は他人では無いのだけれど。