一番近くに君が居る


彼女はそれに気づかない。でもそれでいい。

もうこれで終わりだから。


「…うん、ありがとう!」


その言葉をどう捉えたのかは分からないが、感謝の言葉と共に笑顔に戻ったココ。そんなココに長田は悪戯心で最後に一言。


「じゃあ、牧によろしく」

「うん!……って、え?あれ?」


「なっ、なんで知ってるの⁈ 」なんて、冷静になり慌てふためくココを余所目に、長田は「さて、早く教室に戻らないと」なんて態とらしく言いながら元来た道へと戻り始める。


「ちょっ、お、長田君!わたしも戻るよ!」


何も分からないまま走って長田の後を追うココ。

長田はココが上手くいけばいいなと思った。…まぁ、上手くいくに決まってるのだけれど。

やれやれと、長田ははまた小さく微笑んだ。
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