一番近くに君が居る
6.
「それが私に向く事は無いんだね」
「牧君!追加で一人前だってー!」
その声に「了解!」と返事をし、直哉は焼きそばの具材を炒め始める。文化祭は大盛況。外に構える直哉のクラスの焼きそば屋も随分と売れ行きが良く、忙しくも楽しい文化祭を満喫していた。
「おーい!出来たぞ一人前ー!」
そう言って受付係の女子にパックに詰めた焼きそばを渡すと、直哉は一息ついた。
鉄板の前はヤケに暑く、団扇で扇ぎながら他の店も忙しそうだなぁなんて、目の前に広がる文化祭真っ只中のグラウンドを見渡してみる。すると遠くで一羽のウサギ…というか、一人のウサギの着ぐるみを着た女子が目に入り…それは、直哉にとっては言わずと知れた、幼馴染のココの姿であった。
彼女の首からはダンボールがヒモでぶら下げられていて、何やら周りに声をかけながら歩いている。どうやら彼女は宣伝係らしいと直哉は理解すると、次にココの隣に居る女子へと目を移した。すると目に入ってきたのは白いエプロンと膝上まである靴下に、黒いふんわりとした短いスカート。頭にも何の為か良く分からない白い飾りがついていて…これは完全に、所謂定番のメイド服。
…やっぱり、反対しておいて良かった。