一番近くに君が居る


そのまま二人で3年生のステージを観たり、グラウンドの出店を回ったり、先程までとは違う立場で文化祭を満喫した。

隣で終始微笑んでいる美穂は本当に楽しそうで、直哉はつい罪悪感に身を駆られ、何も今日じゃなくてもいいんじゃないか、折角の文化祭なのにこんな話をしなくても…なんて気持ちが芽生え始める。

…しかしそんな時、思い浮かんだココの顔にそれでは今までと同じだろうと、思い改めさせられた。…そう。このままじゃダメなんだ。


「…中庭のベンチで休憩しないか?」


直哉の提案に美穂はうん、と頷く。
そんな美穂の素直な笑顔に直哉はまた胸が痛んだが、心はもう決めた。少し緊張している気持ちを悟られないよう気を配りながら決意を胸に、美穂を連れて中庭のベンチへと向かった。

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