一番近くに君が居る
ベンチは中庭の隅、植木の奥側にひっそりと置かれている。
そのため、周りの人からは結構見えにくくなっていて、見えるとするならば少し離れた向かい側の保健室などがある棟の廊下から覗くくらいであったが、そこを通る生徒もなかなか居ない事からほぼここに人の視線は無いものと言えた。
そうなるともちろん見えにくいのはこちら側の座っている方からでも同じで、今は校舎の中も賑わっているため、外のベンチといえど逆に周りの人から見えなくなっている分、更にこちらからも見えない分、ここの方が気にせず話がしやすいと直哉は思い、美穂を連れて来たのである。
「…ふぅ。何かはしゃいじゃったなぁ、楽しかった!」
ベンチに座って一息つくと美穂が口を開いた。その表情は先程と変わらず、ニッコリと笑顔だ。
「そうだな、なんかまさに文化祭って感じな日だった」
「ふふ、とかいってまだ一日終わって無いんだけどね。なんだかそれくらい充実してたな」