一番近くに君が居る
どことなく異様な二人を見て笑華は「あぁ、もしかして祭の日ココちゃんと階段のとこに居た奴?」なんてこっそり翔に尋ねると、翔は「あぁ、そうだと思う」なんてこれまたこっそりと答える。
翔自身は長田と面識があった訳では無いのだが、この雰囲気を見る限り、そしてココの発言を思い返す限り、こいつが例の奴で祭の日に何かあったのだと辻褄を合わせるのは簡単な事であった。
「まぁ、用っちゃ用なんだけど…忙しいんなら別に後でもいいわ。笑華が会いたいっつーから来ただけだし」
「…それだけか?本当に?」
ジッと、やけに真っ直ぐと見据えてくる長田の二つの瞳。
「…え?」
直哉は一瞬思考が止まり何を聞かれているのが分からなくなった。それだけか、だって?それってどういうつもりでーーと、その時。目の前の長田はふと雰囲気を柔らかくし、「…なんてな」なんて、小さく笑ってみせる。
そんな長田に直哉は戸惑いを隠せないまま「あ、あぁ」と口籠った返事をすることしか出来ず、「篠宮さん呼んで来るよ、休憩まだだし」そう言って教室の奥へと入って行く長田をただ呆然と眺めているだけであった。