一番近くに君が居る


ココが起きたのを確認した直哉は、部屋を出て久代の待つキッチンへと向かう。そこにはニコニコしながら朝食を作る久代の姿があり、直哉はダイニングテーブルの上にあるひとつのコップを手にして椅子に座った。


「ったく。ココはいつになったら一人で起きれるようになるんだか…。いつまでも起こしてもらおうなんてそうはいかねぇぞ。なぁ、久代さん」

「そうねぇ。でもそうしたらもう直哉君はこうして来てくれなくなるのかしら…」


「それも淋しいわねぇ」なんて言う久代に直哉は苦笑いを浮かべる。すっかりこの5年間で恒例となった毎朝の仕事だ。確かに少し淋しい気もする、と直哉も思う……が。


「いやいや、久代さん。先に起きててもらっても迎えには来れるんですよ」


なんて言うと、「あら、そうね」と久代はニコニコと楽しそうに言った。

ココと久代さんは本当に、こういう所が似てると思う。久代さんを見て育ったからココはあんな風なのか…と、直哉は納得したりする。

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