一番近くに君が居る


ゆっくりと後ろへ振り返る直哉。そこにはやはり声の主である翔が夜の闇に紛れて佇んでいた。
表情まではハッキリとは分からないが…どうせあの表情に決まっていると、直哉は眉間に皺を寄せる。

立ち止まる直哉へと翔は一歩ずつ足を進め、表情が確認出来る距離まで近づいた時、「やっぱりな」と、直哉は声に出していた。ニヤニヤしやがって。今日はいつにも増して口角が上がっているようにも見えた。


「もしかして、元サヤ?」


なんて早々に躊躇いも無く本題を放り投げてくる翔。「ンな訳あるか」と言い捨てて直哉は歩き出し、翔も当然の如くその隣に並んだ。


「おまえ、なんでここに居んだよ。住んでんとこの駅違うんじゃねぇの?」

「んー?まぁオレは今、名を上げてる最中ですから。縄張りも広い訳ですよ」

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