一番近くに君が居る
その瞬間、ハメられた!と、直哉は思った。そうだったと。翔はまだ美穂と付き合ってたのは知っていても、今の帰り道の出来事ーー美穂に告白された事までは、知らないのだ。これでは美穂との間で恋愛関係の事があったのだと、こちら側がココにあったらマズイ事があるのだと、自分からバラしたようなものだ。
「おまえって奴は…」と、恨めしく翔を睨みつけてやるが、翔はどこ吹く風である。完全に翔は確信している。この様子はそうとしか受け取れなかった。
…が、しかし。
「…何もねぇよ。ただ、一緒に帰って来ただけだ」
たとえ翔にバレてしまっていたとしても、もしここで出会ったのが翔で無かったとしても、直哉はその事を誰かに言うつもりはなかった。
他人の事を人に簡単に話して良いものではない。ましてや、内容が内容だけにそればっかりは譲れない。それは直哉のプライドでもあった。