逆らわない
あの時の、恥辱に満ちた、しかし甘美なやり取りを思い出しながら、ふと部屋の鏡を見る。

陶酔しきっている、私の顔。

眼鏡越しに見える私の表情は、蕩けきり、ともすれば淫らにさえ見える。

彼は言うのだ。

『安西先輩の表情は、学生の顔じゃないですね…すっかり飼い慣らされた雌猫か…いや違うな』

そこで一旦溜めを作り。

『物欲しげに男を見る娼婦の顔ですよ…自分から男を誘う、ふしだらな売女の顔です』

そう言って私を嘲笑う。

酷い侮辱だ。

女の子に対する最大級の侮蔑。

それなのに、ああ、何で私って…。

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