女装彼氏×男装彼女
プロローグ

《彼女の場合》


中学三年生、夏。

私は、重大な問題に直面していた。


目の前には第一志望が空欄のままの進路希望用紙。

第二、第三希望には行きたくもないIT系進学校の名前。

視線を上げれば、厳しい顔でお父さんが私を見ていた。



「どうした。早く書きなさい」

「……」

「はぁ……、お前という奴は。何回言ったら分かるんだ。劇団に入るなどと甘い夢ばかり見て」

「甘く見てなんか、ないし」

「甘く見てるだろう。親に内緒で勝手に進路希望を出して、それが通るとでも思っていたのか」



ため息混じりのお父さんにばれない様に、私もため息をつく。


最初に出した進路希望用紙には、演劇が盛んな高校ばかりを書いていた。

私の夢が詰まった、進路希望用紙。

それに比べて目の前の紙には、夢なんて欠片もない。


自慢する訳じゃないけど、自分の頭の良さをこれほど憎んだのは初めてだった。
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