青い星と青虫と
黒い狼の秘密
小夜は教室にもどって帰る準備をした。
((阿狼さんは女生徒の憧れの先輩で・・・私は入学して間もない普通の1年だもん。))
その日はクラスの友人たちもクラブ活動や用事ですでにすばやく帰宅していて小夜はひとりでアパートまで帰ることになった。
朝は阿狼が待っていてくれたことを思い出すと、ちょっぴりさみしい気持ちがする・・・。
引っ越してくる前に志望していた学校に通学していたとしたら、通学時間は1時間以上はかかっていただろうと思うと、歩いて30分足らずなんてめぐまれているのに。
遠目にアパートが見えるところまでもどってきたところで、小夜は体を緊張させた。
((誰か・・・いる!・・・ん?人間なのかな?・・・でもすごく危険な気がする。このあたりは阿狼さんが結界をはってくれてるはずなのに。))
次の瞬間だった。
小夜は、背中にぶち当たるような衝撃を受けた。
「あっ!!!!」
前につんのめって、何とか手をついてうつ伏せに倒れたものの、起き上がることができない。
まるで、強力な粘着テープで背中から道路へ貼りつけられたような圧迫感が背中、お腹、太腿にかかっている。
顔だけを動かして左を見た途端、小夜は目を疑った。
「阿狼先輩・・・!うそ。そんな・・・」
苦しいながらも目を閉じて心を落ち着かせようとすると、銀色狼の姿が見えない。
「違う。いったい何者なの?阿狼さんに化けたりして・・・」
偽物の阿狼は何も答えることもなく、剣を振りかざしたまま小夜に近づいてきた。
((やだ・・・殺されちゃう。誰か来て。・・・阿狼さん!))