青い星と青虫と
((阿狼さんにはあの時のことが見えてるの?
隠し事はできないっていうこと?))
硬直しそうになりながら、小夜が阿狼の目をのぞきこんだ。
「キスされたの・・・バレてたんですね。」
「ええ。狼妖怪ゆえに臭いとお仕えする相手への観察力はとくにするどく訓練されているんです。
だから・・・ショックです。
お別れしなければならなかったあの時より、胸が痛みました。」
「阿狼さん、ここでは私はお姫様じゃないし、普通の女子高生です。
阿狼さんだって生徒会長で忙しい上にルナドルートのお仲間を束ねていろんなことをしているんでしょう?
無理はしないでください。」
「無理なんかじゃありません!
私は悔いているのです。
私だけはあなたの本当のご両親から直々にご命令を受けてお傍にいるというのに、肝心なときには離れていて戦いもしないで、紫音なんかに。」
目の前にいる大人の阿狼がまるで私だけの王子様のような言葉を発しているのが小夜には信じられない気がした。
私はただの八百屋の娘・・・。
ルナドルートでは未来をつなぐお姫様なのかもしれないけれど、大切にされるのも慣れていない上に、女生徒の憧れの的の阿狼が・・・。
「私にはもったいない王子様です。阿狼さんは・・・。
そんなに私なんか気にしなくったって。」
小夜はちょっと過保護が嫌!っぽくそう呟いた。
すると次の瞬間、阿狼はぐいっと小夜を押し倒して低い声でこういった。
「私の手でルナドルートの異変を解明し、正常な再生を導くことができたなら、こうやって私はあなたを私のものにしたいのです。
いや、必ず私のものになっていただきます。」