青い星と青虫と
見た目がお兄さんでも、阿狼さんでも躊躇することなく斬ることができる非情さを持つ人・・・。
でも悪意は感じられない。
それよりも、物悲しくてせつない気持ちにさせられるような。
言葉が出ない・・・なのに誘いを断ることはできなかった。
小夜は黙ったまま紫音について歩いていたが、いきなり紫音に手首を掴まれ、あっというまに紫音の胸に抱きしめられた。
「や、いやっ・・・。」
「頼む、きいてくれ。
俺の胸に手を置いて・・・」
小夜は押し出すような紫音の声に、恐る恐る紫音の胸に手を触れてみる。
少し熱を帯びている。
熱を感じた後に、黒い煙のようなものが立ち上り、紫音がふぅ・・・と息を吐いた。
「あっ!銀色に・・・」
「申し訳ない。姫にこんなことさせてしまって・・・。
王室の神官たちが生きていた頃には、こうやって癒してもらっていたんだけどな。
もう誰も生き残ってはいないんだ。
毒気が心臓を蝕みだして、もう俺は長くないと思ったときだった。
銀色に輝く同胞に連れられた姫の姿を目にした。」
「じゃあ全身触れれば、元気になりますね。」
「だめだ!胸だけでいい。
傷治しと違って後遺症状態にはならないだろうが、モンスターの毒気は大量に浴びれば肉体をすぐに壊してしまう。
俺たち妖怪の肉体など、形の実体化のようなものだから見た目より痛みも少ないが、姫に感染したら俺たちに未来はない。
毒気を浄化できるだけの自然の力をとりこんでから少しずつ毒消ししてほしい。
だからここに来た。」
「紫音さんってとても物知りなんですね。
私はルナドルートのことは記憶も小さな子どもの頃のあいまいなものだけだし、歴史も習わしも自分の力も教えてもらってばかりで。」