青い星と青虫と
紫音は小夜の前髪をすくい上げると、にっこり笑った。
「姫はそれでいいんだよ。
16になって俺たちケダモノや妖精や時には敵から学んでいくんだ。
歴史はずっとその繰り返しだ。
けどなぁ・・・最近俺は、そればかりじゃダメだと思い始めた。
王族の姫が生まれなかったときがないとは限らないんじゃないかと。
「そう・・・よね。私が姫を産まなければいけないことになるわ。」
「王族はいつもエサになることも不条理すぎると思わないか?」
「うんうん・・・。エサなんて嫌。」
「俺の親友は科学者だった。
彼は研究の完成直前で魔物にやられちまったが、俺に送ってくれた研究報告書によると、ルナドルートの内部に強力な悪魔が巣食う秘密があるらしいんだ。
そいつが完全体となるときに、魔物たちが大量発生し大きなパワーを持つようになるらしい。
俺は、そいつを探して旅をしていた。
だが、このザマだ。
変化種の魔物にいいようにされすぎた。
もう誰も信じられない。」
「私も?」
「姫は・・・信じるよ。
命の恩人だし、優しい。
今日のところはもう1つだけ頼みがあるのだけど、いいか?」
「何?私でできることなら・・・。」
「一息でいい。ここの空気をいっぱい吸って、俺の口に吐いてほしい。
そしたら、この腕が思うように動くようになる。
今はときどきしびれて剣が振れないんだ。」
これも人助け・・・と思った小夜は大きく公園の空気を吸うと、紫音へ口移しで吹き込んだ。