青い星と青虫と
小夜が14才になったばかりの頃だった。
当時父親が店を出していた市場にチンピラ風の男が何人か出入りしていた。
小夜はふだん、父親が店を開けてから手伝いに行っていたのだが、その日は参考書を前日に忘れていて、父がまだ卸売りから戻る前にこっそり店に行った。
参考書を持って店を出ようとしたとき、隣の総菜屋から女性の声がしたので、裏口からそっと隣の店の中をのぞいてびっくりした。
肩や背中に入れ墨のある男3人に総菜屋の奥さんがレイプされていた。
身の危険を感じた小夜はひたすら家に向かって走って帰ったのだが、夜になってその見覚えのある男たちは今度はお菓子屋へと入っていったのを見た。
そんな翌朝には、小夜の両親はこの市場から出ていくと相談しているのを立ち聞きした。
「大事な娘を生け贄まがいになんてできません。」
「あたりまえだ!俺たちは娘をちゃんとした相手と幸せにしたいから、毎日働いてるんだからなっ。
今までより店舗が小さくなるくらいはどったことはねぇ。
すぐに出ていくぞ。」
小夜の両親は小夜のために引っ越ししたのだった。
けれど小夜の記憶の中にはまだずっと総菜屋の若奥さんの涙が残っていた。
阿狼は自分の上着を小夜にさっとかぶせると、温かいココアをいれて小夜の前に置いた。
「手もこのとおり。何ともないでしょう?
あのとき、小さな小夜さんを幸せになってくれと見送ることしかできなかった私の責任でもありますね。
どんな傷があろうと、仲間たちが残っていることも振り払ってあなたにどこへでもついていってあげていれば・・・。
紫音のように、味方や仲間をそぎ落として敵をおとすことだけを考え、致命傷を与えるまでできたなら・・・。」
「阿狼さんはそれでいいんです。
仲間を救えた今があるから、私を守ってくれるんでしょう。
私はそんな阿狼さんだから・・・」
「違います。・・・・・もう今日は帰って休んでください。
1つだけ。私は必ず姫といっしょにいます。では。」