青い星と青虫と
市狼は小夜が人間界へ送られたときの銀狼の家のことを話した。
正規軍の長だった紫音の父も、そして紫音も死んだと伝えられた。
分家筋の中でいちばん強かった阿狼に当然のように一族を守る責任が覆いかぶさった。
国王の勅命を受けていたとはいえ、姫を守ることだけで逃亡することは銀狼だけではなく、その配下にいる狼種すべての士気が下がり、全滅につながってしまう。
俺の父親は彼に提案をしたんだ。
狼種すべてを立てなおすためにも、姫を人間界へと放り出せと。
姫は16才になるまではどこからどう見ても人間の娘。
だから、魔物たちも気づくわけがない。
「実際、僕たちも君からの接近がなければぜんぜん気づきもしなかったでしょう?」
「でも、阿狼さんはみんな知ってたみたいで・・・。」
「ああ、彼は知ってた。のぞきセットを姫にとりつけていたからね。」
「あっ!この指輪のこと・・・阿狼さんに質問するのを忘れてたわ。
ほんとにのぞき用なの?」
「心当たりないの?小夜ちゃんが助けて~~~!って思うときに阿狼が来なかったかい?」
「そういえば・・・紫音さんといたあのとき・・・。」
「そういうことだよ。
姫のこととなるとあいつは、銀狼ではなくなる。
それがいいところでもあるし、最大の弱点でもある。」
「弱点?」
「狼の武器は牙と爪なのはなんとなくわかる?よね。」
「はい。」