青い星と青虫と
阿狼はしばらく何かを考えているようだったが、すぐに小夜の知っている阿狼の顔にもどって小夜を抱きしめた。
「学校にいるとき、すごくにらんでいましたよね」
「だって・・・学校でしか姿見ないのに、佐織さんとばかり・・・。」
「ほんとは療養するのを優先したかったんですけど、市狼と連絡をとったりそれに・・・小夜さんの顔を見たくて。
でも、驚くほど佐織さんに捕まってしまって、参りました。
女性は執念深いというかすごいパワーです。」
「ねぇ、阿狼さんは私の何倍も生きてるんですよねぇ。
過去に好きになった女性とかいなかったの?」
「えっ・・・それは。
いないわけがないって言う方が自然でしょうね。
みんなもう亡くなってしまいましたが。」
「あ、ごめんなさい。
ルナドルートはいつも平穏無事じゃなかったんですもんね。
それによく考えたら、阿狼さんは人間じゃないし・・・。
ちょっぴり悔しいです。
世界存続を先に考えなきゃ、結ばれない相手なんて。
私も妖怪か妖精に生まれてくればよかったのに。」
「小夜さんは人間で王族の姫で、私の想い人です。
私は同族と結婚していたこともあります。
それはすべて家どうしが決めた相手です。
銀狼はとくに子孫を残す決め事にはうるさい家でね、本妻といる族長以外は妾との恋愛も自由なかわりに、子を残す行為は月に1日だけという決まりがあって。」
「それってすごく愛してる人がいても月に1回しか愛し合えないってこと?」
「そうです。逆にいえば、愛情に関係なく、1日泊まることがなければ何でもありだということになります。
節操がないですよね。まぁ・・・私たちは獣ですから、女性に心を捉えられたら理性などないに等しい。」
小夜はふふっと笑って阿狼の方を見ている。
「な、何か!?」