青い星と青虫と
小夜は泣きじゃくりながら、紫音にもそういわれたことを思い出した。
「愛する相手だったら生け贄にはならないんじゃ・・・」
「そうだな。姫が本気で相手を愛してあげることができて、相手もすべてを捨ててでも姫を愛することができるならベストカップルだし、未来も明るい。
でもね、ルナドルートの歴史の中で定期的に魔物が力をもって王族に寄生したり、生けるものを殺しまわったりするのはおかしいんじゃないかという研究結果があってね。
歴史上詳しく調べたら、王族の姫は決して愛する男と結ばれているわけではないことがわかった。
むしろ、この前の紫音みたいに切羽詰って姫と・・・っていうパターンの方が多いんだ。」
「だから、手っ取り早い方法を・・・」
「だめだ!その手っ取り早い方法が魔物を呼び込んでいるとしたら?」
「ええっ?」
「紫音はルナドルートで一番人気の騎士で、女性の扱いも慣れている。
妻の数も最高で30人はいた過去を持つ男だ。
小夜ちゃんを思いのままにするのは容易いって言ったら?」
((あ・・・無理強いなのにとても優しくて、何も考えられなくなるキスやすぐに体が火照ってしまうあの愛撫が。
やだ、思い出しただけでまだ胸が熱くなっちゃう。))
小夜は市狼の腕の中で身を固くした。
「もっと残酷なことを言うよ。
紫音はその多くの妻と実の母を魔物を退治するために斬り捨てていったのさ。
あいつがその身の銀色を失っていったのはそういうこと。
自分を愛してくれたたくさんの女性を結果的に生け贄にして、ルナドルートの命をかろうじて救った英雄なんだ。
でもおかしいだろう?
おかしいってことを学者だった彼の母親や姉は論文で残しているんだ。」
「論文?」