青い星と青虫と
市狼は小夜の髪を撫でながら続きを話す。
「魔の元凶はルナドルートにはもともと存在しないもの。
つまり、魔物や魔族の元というか力の源ってさ、本能で動くものには無縁に近いもの・・・だから人間の意思がつくり出してるはずのものだってこと。
ルナドルートでいう人間って誰?
王族と王族に人にされた者、その親族。
で、いつも滅んでいったのはどこから綻んだ結果なのか?
王族の男が食われるところから・・・始まる。」
「それじゃ、元凶も世界の滅びも王族が原因ってこと!
紫音さんが強い魔物が潜むのは、こっちの世界って言ったのも・・・。」
「人間にまつわる魔の情報を知ってたからなのね。
生け贄じゃないってことも・・・。
私自身が醜くて、汚い存在かもしれないんだ・・・。
何も罪のない妖怪さんを人間につくり変える能力だなんて、恐ろしい。
ごめんなさい、私・・・阿狼さんといっしょになれるならってばかり考えて、根本的なところをぜんぜんわかってなかった。」
「気に病まないで。
小夜ちゃんは素直でいい娘だ。
僕たちに比べたらほんとにちょっぴりしか生きていないのに、たいしたものだよ。
知識や経験は僕たち側近にあたるものがお教えしていくものだからね。
勉強嫌いなお姫様でなくてよかったと思う。
小夜ちゃんが生まれて初めての外出許可が出たときだったかな・・・阿狼がね、そりゃ、得意そうに僕に言ったんだ。
『私の御守りするお姫様だ。もうすぐすごい美人ですごい才女ですごく優しい女の子になるんだ。』ってね。
なんでそんなことがわかる?って聞いたらさ、
『私が知っていることをすべてお教えするからに決まってるだろ』なんて言ってたんだぜ。」
「ねぇ歴代のお姫様っていくつでみんな結婚していたの?」
「実際のところ年齢は不詳だ。
16才はみんな超えてた。としか言えないな。
ルナドルートは人の感情よりも生き物の本能でそれぞれが自由に生きる場所だからね。
同族の間なら子がほしいと思った時点で、その日のうちに結婚と初夜が訪れるね。
ただし、王族は相手を人間に作り替える必要があるからそれなりに準備がかかる。」