青い星と青虫と
小夜は不思議そうな顔をして、市狼にまた質問する。
「どうして、王族は人間になったの?
狼さんたちは強いんでしょう?
人間を滅ぼして、自分たちが政権をとるとか考えなかったのかしら。」
「小夜ちゃんが僕たちを本当の姿で見てくれたら、話をしたいと思うか?」
「あ・・・・ごめんなさい、ちょっとひいちゃうかも。」
「ね、動物園よりいろんなのがウジャウジャいてどうすりゃいいの~って思うだろ。
だから僕たち妖怪には化身の能力がある。
人の姿をして同じ席について話し合いをすることができる権利もね。
だけど、僕はやっぱり獣だからね。
人の姿ではなく、本来の白狼でいるのが楽だよ。
ついでにいうと、人の姿なんて続けたくないし、かかわるなら人間ではなくて野山を駆け回れる同種の彼女がいい。」
「そっかぁ、だから市狼さんって私のことは妹扱いやおもちゃ扱いはしてくれても恋愛対象にはしてくれる気配もなかったのね。」
「おもちゃ扱いなんてしてないって。
小夜ちゃんはお仕えする主なんだから、普通に宮仕えしてるだけ。
冷たいように聞こえるだろうけど、身の程をわきまえてるつもりだし、小夜ちゃんは個人的にはかわいいと思ってる。
だからこうして、阿狼になりすましてたんだから。
小夜ちゃんが僕に惚れちゃったっていうのはアリだから。」
「えっ?」
「いろいろ理屈とか過去とかしきたりとか並べてもね、好きになっちゃうのは仕方のないことだってこと。
素直に、うれしいと受け止めるっていうか。
あ、ごめんよ。阿狼と話せるってすごく楽しみにしてたんだよな。」
「ううん、市狼さんと話をしてるとすごく勉強になるよ。
決めた。せっかくお母さんが私のことを頼んでくれたんだから、市狼さんからいっぱいルナドルートの知識をもらっちゃう。
いいでしょう?」
「小夜ちゃん・・・。あの赤ちゃんがいい娘になったもんだな。」