青い星と青虫と

小夜の両親が帰ってくるまでの間、市狼にルナドルートの歴史や他種族の特徴、仕事や身分、食べ物や生き方など事細かに小夜は聞いてメモをとり、時には市狼が歴史書や雑誌などを小夜に貸したりしていた。


「あ~姫の努力と才能には頭が下がるなぁ。
教えて1週間たってないというのに、だんだん質問に答えられないこともでてきたとは・・・。
僕はなさけないわ。はぁ・・・」



「そんなことないって。市狼さんが私に入りやすいところから勉強できるようにお話も本も選んで持ってきてくれてるのがとてもわかるよ。
ありがと。

これだけわかりやすく教えられるなら、学校の先生していればよかったのに。」



小夜は笑顔で市狼にそう言うと、市狼は俯いて言った。


「学校の先生だったんだ・・・僕は。」


「ええっ、そうだったの。
でも、先生がどうして武人に?」


「もう、生徒がいなくなったから・・・。
僕の教え子は魔物に襲われて、ほとんどいなくなってしまった。

もともと僕は戦ったり、争ったりするのが嫌いで、親からよく狼族としてなっていないって叱られたんだけど、体が弱い子や強くならないと生きて行けない事情のある子のために武道も教える文官として仕えていた。」



「ごめんなさい・・・歴史を教えてもらおうとしたら市狼さんの言いたくないことばかりにたどり着いてしまって。
私、あとはひとりで勉強できるから・・・夜のお守りはしなくていいよ。

行動はわかっちゃってるんでしょう?」



「いや、頼まれた以上は任務を果たさないと気が済まないからね。
言いたくなくても歴史の一部だし、伝える相手が姫ならお伝えしなきゃいけない。
それが先生としての僕の役割。

それにさ、小夜ちゃんの家庭教師はやりがいがあって楽しんでるのは僕の方かもしれないんだ。ははっ」


「ほんとに・・・?」



「ああ。生徒をなくしたときは悲しくて悔しくて、他人にものを教えるなんて何の役にもたたないじゃないかってくさってたけど、今なら姫もそうだけど、どこかにいろんなことを知りたいやつが隠れているんじゃないかって期待できる。」
< 83 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop