青い星と青虫と
小夜がびっくりして立ち上がると、市狼はクスクス笑っていた。
「あははは、おもしれぇ。
でもさ~こんなのでいちいちドキドキしてたら小夜ちゃん、危険だなぁ。
かわいい女の子に色目つかう男って多いからな。
こっちの人間の男にはとくに気をつけるんだよ。
とくにHなんかしちゃったらさぁ・・・」
「あっ、どうなるの?
こっちではそれは見た目普通なわけだし、知りたい!」
「相手は一切変化しない。かといって小夜ちゃんも変化しない。
ただ、寿命の少ない子ができるらしい。
それはルナドルートの王族直系以外の人類の場合。
姫がそういうことすれば、子はルナドルートでは育てられない。
こちらの世界で単なる浮気をしたということになって、王になる夫を早急に決めることになる。
まぁ、こっちの男とやってもいいけど、王にはなれないよってことだね。
子どもは寿命の短い、魔力ない子どもだから父親に預けて君はこの世界を出るしかなくなってしまうけど。」
「そう。人類なのにすごく違うのね。
で、どうして妖怪とならOKなの?
セックスしたら人間に作り替えられちゃうってどうして?」
「どうしてだろうね。その答えがあるとしたら王宮の歴史書や誰かの日記あたりに答えが載ってるんじゃないかな。
ヒントはルナドルートの生物の寿命とか役割なんだと思うけどね。
狼族は王族と近いし、勇敢だからね。」
小夜は16才になってから、こんな短期間でいろんなことを覚えることになるとは思わなかったが、決して疲れたとも思わなかった。
むしろ、市狼の話や与えられるルナドルートの謎がまるで自分を名探偵にしてくれているかのような楽しさをおぼえた。
「ほんとにもし、来年度もこっちの学校に居たとしたら、市狼さんには先生としていてほしいな。
歴史も生物学も習慣もすっと頭の中に入ってくるんだもん。
たくさんの民が亡くなって不謹慎なのかもしれないけれど、亡くなった方々のために王族の生き残りである私が悲しいことも知る必要があるんだと思って。」