青い星と青虫と
阿狼の悲しげなのに、強い口調は小夜の心を動かさないわけがなかった。
「ルナドルートの姫である小夜が阿狼に命令する。
今夜、王宮の寝室に来て私のものになってください。
そして、明日から王宮の人間として私の夫として皆を守ってください。
返答は?」
「はい、すべて姫様のご命令のままに。
私のすべてを小夜様に捧げましょう。
寝室への案内も私にさせてください。
分家筋とはいえ、銀狼として最後の夜・・・小夜さんには私の本当の姿を覚えておいてほしいのです。」
「も、もちろんよ。
阿狼さんの本当の姿は誰よりも優雅で気高くて、雪のように真っ白でふわふわなのはよく知ってるわ。
阿狼さんだから怖くないの。本当よ。」
「小夜さん・・・。」
「ごめんなさい、紫音さん。言いたくないことまで告白してくれたのに。
私はやっぱり」
「感情があることだ、仕方のないこと。
小夜が幸せであって、皆が幸せになれればそれで俺は十分だ。
小夜が好きなことには変わりはないんだしな。」
「よかったね。小夜ちゃん。
これで僕も、次は先生で登場できるようにがんばらないとね。あはは。」
そして、王宮へ行く前に阿狼と小夜は2人きりで話をするためにいったんアパートへともどっていった。
「紫音さん・・・さっきの過去の話って」
「ああ、俺には妻も子もいない。
それらしく聞こえた方がいいと思っただけだ。」
「やっぱりね。家族がいて家を継いでいないなんておかしいと思った。
そこはこっち生まれの姫にはわからないって計算済みなのは憎いなぁ。」