青い星と青虫と
翌日には両親ももどってくる。
1週間最後の夜に阿狼とこういう形で、アパートに居るとは。
そして、これからルナドルートの王宮で夫婦になる・・・。
小夜はうれしいとかはずかしいとか、怖いとか、好きなどの感情があまりに多くとびだしてくるとすべてが真っ白になって心が無になるような感覚をおぼえた。
言葉が出てくることもなく、ただ体が固まったままだった。
すると、阿狼の手が左右それぞれに小夜の手を掴んだ。
「あっ・・・」
「震えてる。さっきの命令は絶対的な威圧感があった。
嫌だという意味ではないですよ。
立派な姫になられてうれしかったのです。
けれど、今ここにおられる小夜さんは手を震わせて今にも壊れてしまいそうな女の子です。」
「あの、やっぱり阿狼さんは私なんかとじゃ・・・う。」
阿狼は軽く小夜の唇の上に唇を重ねて、優しく笑った。
「あきらめの言葉はいりません。
私は小夜さんのか弱い部分を支えるためにここにいるのです。
結果的には人間の王族になってしまう私ですが、お育てした姫ともっとともに居られる幸せ・・・。
ルナドルートの再生にはまだ敵が多く、幸せなどと口にしてはいけないのでしょうが、今宵ひとときだけは狼最後の至福の時を過ごしたい。
さあ・・・王宮へ向かいます。」
顔をにっこりと見合わせた2人はルナドルートの王宮へと向かった。
小夜はシャワーを浴びて、用意されていた寝室にバスローブ姿で入った。
そしてバスローブを脱いでベッドへと横たわる。
1m離れたところに銀色にうっすら光る銀狼が小夜を見つめている。
小夜は、そっと両手をのばす。
銀狼がペロっと小夜の首筋から背筋にかけて舐めてくるのがわかった。
「あぁん・・・」
犬に顔を舐められるようなものだと予想していたのに、この感覚は全身を手で撫でられているように思える。