青い星と青虫と
阿狼は胸に手を当てて市狼に小夜を救い出す説明を始めた。
「私の知る限り、蛇族は王族に絶大な信頼を得ていたはずなんだ。
狼が表立ったところの戦士ならば、蛇は裏を守っていた。
姫を逃がすときも、進んで盾となってくれた。
それがどうして・・・魔物の手下のような真似をしたのかがわからない。
しかも、とても美しい白い蛇だった。
悪意にすべて任せているような存在ならばどす黒く濁っているはず。」
「そうだな。俺も子どもの頃に迷子になったときだったか、勢い余って崖から落ちそうになったところを蛇に助けられた。
そのときだったか、蛇族の長の双子が白く輝くとても美しい蛇だと話を聞かされたことがある。」
「双子なのか?」
「そう聞いた。雄と雌のとても仲の良い双子だと長老が自慢してやまないと。」
「もしかすると、その片方なのかもしれないな。
白き輝きを忘れないまま悪事をしなければならない状況・・・。
これは我々に救いを求めていたのかもしれん。
市狼は紫音に応援を頼んでくれないか。
私は先に様子を見に行く。」
「おい、ひとりでは危険だ。
ガイドブック見ながらじゃろくに動けないだろう。
おまえさんが嫌いな紫音を応援を頼むなんて、ヤバいと思ってる証拠。」
「ろくに動けないどころか動き過ぎだから困っている。
5分もたたないうちに敵の懐に入ってしまいそうだからな。
おまえたちにはついて来れないほどにな。
ある程度の動き方はもう頭に入った。
たぶん、今なら蛇には負ける気がしないんだ。
ただ・・・事情があるなら白蛇を救ってやりたい。
そして仲間に戻ってほしい。」
「ほぉ~~~それは王族としての力量かい?
そうか、阿狼は王様なんだったな。
それは数々の非礼をお許しください。
王様の命には絶対で・・・なぁ~~~んて。
ぷっ・・・あははは」
「あはははは・・・みんな分かった上での冗談はやめておけよ。
頼むぞ。」
「わかった。お手並み拝見! 王様。」