everlasting love~幾星霜の果て
そんなヴェラの口癖は「こんな家、絶対に出て行ってやる」。
その願望を、ピアニストになるという夢にかけているのだ。
「で、ヴェラ?」
「なぁに?」
繰り返される“ハンマークラヴィーア”の第4楽章。
何度もつまずいてはまた最初から弾き始めるヴェラに、僕は訊く。
「どこの音楽学校に入るつもりなんだい?」
「……内緒」
ピアニストになりたいというヴェラの夢を聞いてから1年。
彼女はいまだに、どこの音楽学校を受けるのか教えてくれない。