everlasting love~幾星霜の果て
「君がどこの音楽学校に入りたいのか教えてくれないと困るんだけどな」
少し考えてから、ヴェラはにこりと笑った。
「じゃあ教えてあげる。先生が、この曲の第1楽章から第4楽章まで全部弾いたあとでね」
「……君って子は」
苦笑しながら僕はヴェラにイスを譲ってもらい、ピアノの真正面に座った。
“ハンマークラヴィーア”は第4楽章まであるのだが、交響曲にも匹敵するほどの演奏時間だ。
その時間、約44分。
ヴェラは、僕の隣でじっと座って聴いていられるのだろうか?
鍵盤に指を静かに置いてから、ヴェラをちらりと見る。