everlasting love~幾星霜の果て
「……第4楽章だけでいいわ」
やっぱり。
ヴェラがお気に入りの第4楽章を選ぶのは容易に想像できた。
僕は静かに笑って、両手を鍵盤の上に滑らせた。
弾いているあいだじゅう、ヴェラの視線を感じる。
鍵盤のうえを踊る指を見たり、時折、僕の顔に視線を移したり。
久しぶりだ。
こんなに近くで、穏やかな時間を君と共有できたのは。
でも、やはり今回も結ばれない運命なのは分かっている。
何もかもを捨てる覚悟があるのなら、ひょっとしたら結ばれるかもしれない。
けれど、ピアニストになりたいという君の夢を壊すことなんか僕にはできない。