everlasting love~幾星霜の果て
「……わたしが生きているあいだは何事もなく、平穏な日々だったわ」
「ほんとうに?」
「えぇ。タスクが生きていた頃と変わりない、平和な世界」
「……“ヒコミコ”が黙っていたとは思えないけど」
ある人物の名前を出して勘ぐってみると、律は過去を回想するかのように目を閉じ、空(くう)を仰ぐ。
「“ヒコミコ”。そんな人もいたわね」
ヒメミコ様の弟、ヒコミコ。
俺は、あいつが大嫌いだった。
ヒメミコ様は、民衆の前に決して姿を現すことはなかった。
俺たちが知っているのは、御簾のむこう側で神託を告げるヒメミコ様の高く、柔らかい声だけだ。