喧嘩屋土門
とても平手で打ったとは思えないような、鈍い打撃音が店内に響いた。

人が飛ぶ。

形容としてはよく聞く言葉だが、本当に人間が宙を舞う光景を、向日葵は初めて目にした。

店内の椅子を薙ぎ倒し、破壊し、それでも止まらず床を転がり、建物が揺れるほど激しく壁に叩きつけられる土門。

その振動で、天井から埃が舞い落ちてきた。

「ど…」

向日葵の瞳から、ぶわっ、と涙が溢れ出る。

「土門!土門っ、ねぇちょっと土門っ!やだ!いやっ、いやあぁあぁっ!」

半狂乱になって喚く向日葵。

その悲鳴など気にもせず。

「久々だなぁ…」

雲竜は薄く笑んだ。

「人間を張り殺す感触は…」

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