カワラナイデ。


しばらくして、伊織が手を離した。


「…じゃあね、柚名」


にっこり。

来た時と同じような作り笑いを浮かべて、伊織は帰っていった。


「えっと…」


唇を触る。

まだ、微かに残るあの感触。


あれって…。


ー…キス?



どさっ。


思わず貰ったおみやげを落としてしまった。


ー状況が理解できると…。


「嘘でしょ!!??」


私は玄関に向かって叫んでいた。

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