白い翼と…甘い香り

主人の言葉の中に
私を想う気持ちなんて
1つも無い。

そんな事は知っていたけど
それでも悔しかった。


和也に出会ってから

余計にそんな言動が
鼻についた。



和也の、人を思いやれる
優しい気持ちを知ってからは

その他の物がとにかく
色褪せて見えた。


こうやって
自分の考えがすべて正しいと
思っているような言動を

少しは頼もしいと思い憧れ
頼りになる人だって

そんな風に思っていたのは
何年前の事だろう。


すぐに、自分の考えは
間違っていたと気付いたけど

段々と、逆らう言葉を
飲み込むことに慣れていった。





それでも、悪い人だと
思い切れない部分もあった。

不器用な人だと、そんな風に
感じたこともあった。



少し身体が弱くて、年に何度か
入院する事がある私の母を

私の知らない所で
援助していた。


父の遺した物があるから
生活に困ることは無かったけど

いつも気に掛けて
くれてるのは知ってる。



だけどそれを知ったとき
もう
私の気持ちも冷めていたのか

人質を取られてるような
気分になった。


母は主人をとても優しい人だと
そう思い込んでいたから

私は大好きな母にさえ
ウソをつく。

「幸せよ…」と
そう言うしか無かった。



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