白い翼と…甘い香り

■あと10日■


「ねぇ、和也
今日は外へ出てデートしない?

何だか天気もいいし
気持ちよさそう」

今まで私からこんな風に
誘ったことはなかったから

和也は
キョトンとした目で見ている。

外へ出るの
避けてきたもんね…


「大丈夫、なの?」

和也は主人の存在を
いつも気にしてくれる。

本当は口に出したくない
気にしたくもない

そう思ってるかもしれないのに
私の事を気遣ってくれる。

嬉しいなんて気持ちはなくて
いつもそれを、申し訳ないと
心の中で謝っていた。



「うん、今朝からちょっと
地方へ出張してるの。
明日の夜まで帰らないんだよ」

それは、ウソではなかった。

M工業の人と一緒に
同じような物を製造している
S工業の新しい工場を
視察に行った。

東北地方で少し山の中だから
交通が不便だって
言いながら出掛けた。

だから、明日の夜まで
帰らないのは本当だった。

何かを
疑っている様子もない主人は
自分の予定だけを伝えると

私の行動にはもう
関心がないようで
電話を掛けてくる事もなかった



だから、明日の夜まで
一緒に居られる。

「んじゃ、どこ行く?」

「どこか、遠くがいいな」

「俺んち泊まるみたいに
外で泊まっても大丈夫?」

「うん、大丈夫」

「じゃ、リカはちょっと帰って
荷物の用意してきなよ。

着替えだけあれば
いいんじゃね?」


そう言いながら
和也は楽しそうに
パソコンを立ち上げた。


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