白い翼と…甘い香り

ロビーへ降りて行きフロントで
何か簡単なガイドブックは
無いかと訪ねてみる。

とても丁寧な対応で何種類かの
小さなパンフレットを分けてくれた。

和也はそれを1つ1つ見ながら
ここからの距離とか
お勧めスポットはどこかとか

色々と教えて貰ってるみたいに
話し込んでる。

私は、手入れの行き届いた
キレイな中庭を眺めながら
行き交う人を観察してた。

仲良さそうな老夫婦や
小さな子供を連れた若い夫婦

どんな人にとっても
旅先のホテルでの夜は
日常生活と違って
どこかワクワクして

いつもと違う景色に
キラキラした目をしてる。



私は、どんな表情を
してるんだろう。

和也と一緒に居て
嬉しい気持ちと

とても重い
灰色の気持ちを心に抱えて

いったいどんな顔で
居るんだろう?


上手く
笑えてたら良いけど…



和也を振り返って見ると
ペンを借りて何かを
書き込みながら

まだ親切なホテルマンと
話してるようだった。

リカをどこに
連れてってやろうかって

きっとそれしか
考えてないと思う。

部屋に戻れば、何種類もの
ガイドブックを並べて

リカはどこがいい?
と聞きながら

ホテルマンに聞いた説明を
繰り返してくれて

きっと明日は
私の希望する通りに
動いてくれるのよね。


明日だけじゃない
いつもいつも
私が言う事に
反対も反論もなく

「いいよ」
って言うんだよね。


優しい声で
包み込むような暖かな目で

「んじゃ
そうしようっか」

ってね…


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